他店で購入した革財布の修理を頼まれた件(大変でした)

高校の友達で「シミズさん」という人がいます。あだ名は「シミ」。シミから突然連絡が来て、「財布の横がボロボロになったので直してほしい」と言われました。

財布の横?とりあえず写真送ってもらったら、うちで言う「ラウンドファスナー長財布」のマチの部分が確かにボロボロになっていました。

できるかできないか分からないけれど、「とにかく送ってくれ」ということになりました。

でね、これが結局すごく大変だったんです。

目次

海外旅行で買ってきたお財布が壊れました

シミが修理を頼んできたお財布は、海外旅行で自分用に買ってきたブランド品でした。本物かと聞かれたら、私には分からないとしか言えません。だって私は昔からブランド品には興味がないんです。ブランド品が似合わないと言うのが正直なところです。高すぎるのも不満です。(というか、買えません。)

ところで、お財布ってなかなか複雑な作りになっていて、しかもお店によって作り方も違ったりします。だから、修理できるかどうかは、実物を触ってじっくり見て判断することになります。

シミの壊れたお財布は、こんな感じでした。

壊れた革財布

壊れているのは「マチ」の部分でした。壊れたというよりは、使っているうちにボロボロになってしまったというのが実情です。

他の部分は全くきれいなのに、なぜマチの部分だけボロボロになるのでしょうか。よく見ると、マチが2重になっていて、内側に布が貼ってあるのが分かります。

これはどういうことでしょう。思うに、おそらくこの部分は合皮でしょう。つまり、革ではありません。うすい合皮に布を貼り合わせているようです。

ブランド品でもマチの部分は合皮のことが多い

先ほどのマチを分解し、取り出してまじまじと見てみました。こんな風になっています。

なんか、ブランド品でもこうなっちゃうと惨めですね。かわいそうなマチ。

いつもお世話になっている革屋さんに聞いたところ、

「ヨーロッパの一流品でも、財布のマチの部分に合皮を使っているところは結構あるんですよ。だからその部分からダメになっていくケースは多いんです。

だそうです。

そうなんですか???

革だと、こんな感じにはボロボロになりません。合皮って、最初のうちは革と見分けがつかないんですが、使っていくうちにどんどんボロボロ、ぼそぼそになっていくんですよね。

まわりの糸を全部はずして縫い直しになりました

さて、肝心の修理ですが、一般の人は「マチの部分だけ作って縫えばいいんじゃない?」と思うかもしれませんが、それがそんなに簡単にはいかないんです。

このラウンドファスナー長財布の場合、ファスナーも含めてまわりの部分をグルっと縫っているので、その糸をすべて外して縫い直さなければならないんです。

この作業がまた、しんどい!すごい時間がかかります。なんせ、革を傷つけないようにひと目ひと目、糸を外していくという気の遠くなるような作業が待っているのです。

縫っていく作業のほうがずっと楽な気がします。

修理した後のマチはこうなりました(もちろん革です)

かなり苦労してつけた革のマチは、こうなりました。牛革で作ったので、最初のものと比べたら高級感がハンパありません。小さな部分ですが、革を使うか使わないかでこんなに見栄えが違うなんて、やっぱり革って素晴らしいと感じた瞬間でした。

革財布の本体もお見せしたいところですが、ブランド名が分かってしまうので申し訳なくて、載せられません。

まる一日かかってしまったので、修理代として1万円いただきました。シミは「いくらでもいいよ」という豪傑です。ちなみにシミは独身貴族。さすがです。うらやましいです。

修理したお財布を送り返したところ、大満足してくれました。よかったよかった。

ちなみに、当店(ザッカバッカ)のラウンドファスナー長財布のマチはすべて牛革を使っていますので、今回のシミのお財布のようにボロボロになることはありませんし、今まで(2004年以降)お買い求めいただいたお客様からも、マチがダメになったので修理してほしいという要望は一度もありません。

下の写真はザッカバッカの長財布です。ご覧のように、牛のヌメ革をゼイタクに使っています。壊れることはありませんのでご安心ください。

ザッカバッカのラウンドファスナー長財布は下のリンクからご覧になれます。

ザッカバッカのラウンドファスナー長財布

香取君(元SMAP)が毎年修理しているお財布のこと

今回のお財布を修理していて思い出したことがあります。昔、まだSMAPが存在していたころ(なんと懐かしい!復活してくれないかな、いい曲がたくさんあったよね)、テレビで香取君が言っていたことがあります。

なんでも、キムタクからお財布をプレゼントしてもらって、それを大切に使っているとのこと。毎年メンテナンスに出していて、それに2万円かかっていると言っていました。

当時は私は革の仕事をしていなかったので「高いなあ」と思っていましたが、今、革の仕事をしている身になると、「メンテナンスで回りの部分を縫い直したりしているのかな、なら2万円かかってもおかしくないかも」と思うようになりました。

どんな財布なんでしょう、見てみたいものです。

せっかく修理したのに、また財布のオーダーが入った後日談

さて、ようやっと修理が完成して送り返したシミの財布ですが、これには後日談があります。

シミに納品して1か月ほど経ったころでしょうか、またシミから連絡がありました。

「ラウンドファスナー長財布をオーダーしたい」

はい?この前ちゃんと修理して送り返したばかりなのに、いったい何があったの?

シミいわく

「あの財布を車で踏んづけて壊してしまった」。

はい??

どうやったら財布を車で踏んづけるなどという芸当ができるのでしょうか。

せっかくマチを直してきれいにしてあげた長財布は、車に踏まれてすべてが壊れてしまったそうです。

「今度は自分の好きな色で作ってほしい」とのこと。

どんな色が好きなのかと聞いたらば…

「私、高校生の頃から雑巾みたいな色が好きなんだよね」とのこと。

雑巾みたいな色とは???

よく聞いてみると、シミにとって雑巾みたいな色とは、「オリーブグリーンをもっとくすませたような色」だそうです。

いやー、雑巾みたいな色を作るのに苦労しましたよ!

オリーブグリーンにいろいろな色を少しずつ混ぜて、いろいろ試し初めをしました。

最終的なオーダーは

「雑巾っぽい色をいろいろ使って複雑な色合いにしてほしい」ということ。

複雑な色見を作るのは意外と得意なので、「やってやるぜ!」とばかり気合を込めて染めてみました。

できあがった「複雑系の雑巾色」は、シミが喜んでくれたのでやった甲斐がありました。

写真を撮るのを忘れたので(あるいは写真をどこに収納したのか忘れたので)ありません。

ちなみに、シミは女性です。

みなさん、くれぐれも車に乗るときはタイヤの下に財布を置かないようにしてください。財布が全壊します。(たぶんファスナーがひどいことになったのでしょう。)

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